何で石鹸を作ろうと思ったの?
- naohisa
- 2023年5月2日
- 読了時間: 7分
更新日:2023年5月2日
最近、地域のイベントで数回石鹸の量り売りをさせてもらった。そこでよく聞かれる質問ナンバーワンは、「なんで石鹸を作ろうと思ったの?」
実はいつもこの答えには困っている。
なぜなら、この「なんで=なぜ」という言葉には複数の意味があるからだ。「なぜ」は、英語で言うと「Why」が普通当てられるが、どのようにして、またはどのような経緯でという意味の「How」が意図して当てられる場合が日本では往々にしてある。特に、女性の使う「なぜ」は、かなりの確率で「How」の場合が多いと思っている。
・Why did you decide to make a soap?
(なぜ石鹸を作ろうと思ったのですか?)
・How did you decide to make a soap?
(どのような経緯で石鹸を作ろうと思ったのですか?)
この2つの意味にもとらえられる質問である。
なぜこの質問に困っているかというと、前述の通り、「なぜ」にはWhyとHowの意味があり、どちらを聞きたいのかが明確ではないからだ。そしてさらに、Whyの場合、実はとても哲学的な質問で、答えるのに少々苦労するからだ。そして、私はよく癖でWhyと自問して生きてきてしまっている。
でも、Howなら簡単に答えられる。
Howの場合は、
・コロナ禍で会社を辞めることになって、ヘンプの会社にいたことから、ヘンプに関わる事業を行おうと思った(起=きっかけ1)。
↓
・身体を洗わない人はいないから、良い石鹸を作れば一定の人にはニーズがあると思った(起=きっかけ2)
↓
・今まで最高に気に入った固形石鹸に出会えていないから研究の余地が多分にあると思った(起=きっかけ3)
↓
・そこで、まずはヘンプの石鹸を作ろうと思って石鹸一般について調べていくうちに、日本国内には純国産石鹸がほぼ皆無で、その理由が植物油の組成にある事が分かった。つまり、ほとんどの石鹸は東南アジアなど亜熱帯地域でしか採れないパームやココナッツやし油などが主原料であり、これを混ぜないと良い石鹸にならないと考えられている(承=気付き)。
↓
・アウトドア・DIYが好きで、その場その場で物資を調達する、または制作することが好きで、もし地産地消、今流行りの言葉SDGsを使うと、SDGs的で極めてエコな石鹸が誕生することになるのであれば、それはチャレンジする価値が大いにあると思った(転=発展)
↓
・このような経緯で、ヘンプ石鹸だけでなく、あらゆる植物油石鹸の潜在的な可能性が見出せたことから、菜の花の県である千葉県在住ということもあり、まずは菜種油100%石鹸から作ろうと思った(結=結論)
と、こんな感じである。
では、Whyの場合はどうなるか。
上記Howの中の、きっかけ2の、身体を洗わない人はいないから、良い石鹸を作れば一定のひとにはニーズがあると思った、という理由がWhyの質問の答えに1番近いように思う。あと、私はDIYが好き。
しかし、これでは、なぜ石鹸なのか?の答えにはなっていない。例えば、石鹸という言葉や、身体を洗うという言葉のところを他のものに換えても成り立ってしまうからだ。
つまり、なぜ液体石鹸ではないのか、なぜ化粧水ではないのか、なぜ野菜ではないのか、なぜお米ではないのか、なぜ電気自動車ではないのか、なぜビールではないのか?
・・・と、このような思考方法に寄って見ると、無限に存在する石鹸以外の何かではなくて、唯一石鹸である理由について答えるためには、その他の無限に広がる事象について石鹸と対比していく必要がある。化粧水よりも石鹸の方がニーズが高いからとか、野菜・米作りは土から作るなら時間がかかるからとか、食べ物を作るのは競争が激しいから事業として難しいとか、電気自動車を作るにはバックグラウンドが違うからとか、お酒はそこまで好きじゃないからとか。
そして、この設問のその行き着く先は、つまり石鹸はあなたにとってどのような存在なのか。言い換えると、私と石鹸の関係性はなんなのか、という質問になってくる。
ここまでくるとかなり難しい。。。
だから本当は、この質問には、こう返したいのだ。以下、対話形式のやりとりをシミュレーションしてみる。
質問者: 千葉在住39歳、エンジニア、料理好き
私: 千葉在住38歳、個人事業主、今歯が痛い
質問者「なんで石鹸を作ろう思ったの?」
私「作ろうと思う理由が必要?だとしたら、他のものを作らない理由も同時に存在しているわけだから、それに答えるのは無限の問いかけに近くなるわけで、なぜそれなのか、なぜそれじゃなきゃダメなのかということに答えるのは、ほぼ不可能に近いんじゃないかな。なんであの子の事が好きなのっていう質問と同じに聞こえて、それって何となく感覚の問題じゃん? こーゆーところが好き、あーゆーところが好きって答えられるけど、でも、なんでそーゆーところが好きなの、あーゆーところが好きなのって問いには答えてないじゃん? だから、なんで石鹸作ろうと思ったのって質問めっちゃムズイって!!・・・逆に聞きたいんだけど、なぜあなたは石鹸を作ろうと思わないの?」
質問者「・・・。まあ、強いて言えば、この世に身体を洗うものはいっぱい売ってるし、買ってくれば良いから作る必要ないからね。」
私「なるほどね。まあ、そうだよね。でもじゃあ、世の中にたくさん飲食店があるのになぜ自分でご飯を作ってるの?今だったらウーバーイーツでもなんでもあるし買ってくればいいでしょ?」
質問者「いや、やっぱり、そこはこだわりたい。たまには美味しいだけのジャンクなチェーン店にも行くし、たまにはコンビニのお弁当も買うけど、基本的には安心安全だから自分で作りたい。」
私「なるほどね。つまり、石鹸を作らない理由はいっぱい売ってるからで、料理をする理由は安心安全のためなんだね。じゃあ、もし、実は石鹸がまったく売ってなかったら?もし、確実に安心安全な飲食店だったら? 石鹸が世の中にないなら作るしかないよね? めちゃくちゃ安心安全ならそこで食べてる方が良いんじゃないの?」
質問書「そりゃそうだよ。石鹸が売ってなかったら作るしかないよね。作り方調べて。でも、確実に安心安全な飲食店だとしても、やっぱり基本的にそこは自分で作るかな。」
私「なんで?」
質問者「だって、外食したらお金がどんどん無くなるし、やっぱり安心安全と言っても、工程全て見てるわけじゃないから本当に安心安全かわからないし、あと料理すること自体が楽しいからね。」
私「なるほどね。じゃあ、家にガスコンロが無かったら?」
質問者「そりゃあ、料理できないわ!笑
外に食べに行くよ。もしくは家に届けてもらうよ。なるべく安心安全な料理をね。」
私「ということは、作れる環境があるから作るってことだ。」
質問者「そう。あと、安心安全だからね。楽しいし。」
私「なるほどね。じゃあ、作れる環境があれば石鹸も作る?」
質問者「売ってなければね。どこにも。そしたら、作れる環境があれば作るよ。」
私「私が言いたいのは、そういう事なんだよ!あなたにとっての料理が、私にとっての石鹸なんだよ。あと、石鹸作り、楽しいし。」
質問者「なるほどね。じゃあ、作れる環境があって、世の中になくて、安心安全で、その上、楽しいから石鹸作ってるって事?」
私「そう!それ!そーゆーこと!」
質問者「そーゆーことね!」
私「そう!そう!それそれ!!長くなってごめんね。」
質問者「まあ、いいよ。何となく分かった。物事は理屈じゃないな。いや、結局、シンプルってことか。やりたかったって事か。」
私「ごめんね。混乱させてしまって。結局、私が生活する上で石鹸は必要なものだから良い石鹸を作ろうと決めたんだ、ということかな。そしてそのような石鹸を作る技術は私の生きてきた経験上、チャレンジすべき面白い事だと思ったからやりたかったんだ、ということかな。」
質問者「なるほどね〜。」
私「そう。だから、単純に言えば、普通に石鹸使うから、それなら良い石鹸を作る研究から始めてみようと思ったの。そして流れで、現在販売にまで至っているの。」
質問者「なるほどね〜(いや〜、でもそんなことが聞きたかったわけじゃないような。俺が料理する話いるか???という心の声)。」
と、まあ、こんな感じである。
こんな感じで、凄くめんどくさくなるから、実はあんまりされたくない質問ナンバーワンなのだ。そして、答えになっているような、なっていないような。笑
だから、これを読んだあなたはもしイベントで会った時には、なるべく私に聞かないで欲しい、
Whyのほうの、「なんで石鹸を作ろうと思ったの?」を。
まあ、勝手にWhyととってしまう自分の癖が強いせいだが。
最後に、少し話はズレるが、昔付き合っていた彼女とのケンカはほとんどがこの「なぜ」にまつわる意味の取り違えがきっかけだった。つまり、私はWhyが聞きたいもしくは言いたい、彼女はそんなことどうでもよくてHowが聞きたいもしくは言いたい。女性脳と男性脳の違いなのだろうと今は思っている。女性脳は、地球・大地・生活に根ざしていて、男性脳は、宇宙・空・遊びに開いている。陰陽の関係を真に理解すれば男女の関係はうまくいくのだろう。
そのうち、数秘術と陰陽五行説を組み合わせた石鹸占い、特に相性占いのアプリを作ろう思う。
なぜなら、石鹸は水と油、本来混じり合わないものを混じり合わせる特別な性質を持つものだから。自分と気になる相手の誕生日が分かれば、どの石鹸をプレゼントすればうまく行く確率が上がるのか、喜ぶのかを一瞬で弾き出すアプリ。菜種なのか麻なのか大豆なのか。そんな面白いことを想像させてくれる石鹸なので、石鹸に惹かれたのかもしれない。
完
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